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ニュース詳細

日本気象学会2024年度 秋季大会にて、機械学習を用いたマイクロ波放射計の輝度温度推定と評価に関する学会発表を実施

2025年01月29日

古野電気株式会社(本社:兵庫県西宮市、代表取締役社長執行役員:古野幸男、以下 当社)は、2024年11月12日から15日までの期間中、つくば国際会議場(茨城県つくば市)で開催された日本気象学会2024年度 秋季大会において「機械学習を用いたマイクロ波放射計の輝度温度推定と評価」というテーマで学会発表を行いました。

引用元:公益財団法人日本気象学会

本学会は、日本学術会議より「日本学術会議協力学術研究団体」として指定を受けている学会の1つです。毎年、気象学における最新の研究成果や技術開発の発表および情報共有を行うために開催されるイベントで、国内外から多くの気象学者や専門家が集まります。

研究の背景

近年、線状降水帯などによる豪雨災害が多発しています。豪雨をもたらす積乱雲の発生等を高精度に予測するために、大気中の水蒸気を観測する研究が注目されています。マイクロ波放射計は大気中の水蒸気や雲の水分などが発する微弱な電波を観測するための装置で、気象観測や気候変動研究などにおいて幅広く利用されています。当社の開発したマイクロ波放射計「KASMI」は、業界の標準となる高い精度と信頼性を持ちつつも、その小型・軽量な設計により設置場所を選ばないのが特長です。
そのマイクロ波放射計が出力する値の一つに輝度温度があります。輝度温度は大気の水蒸気量や雲の水分を推定するために重要な値ですが、従来、輝度温度を算出するためには半年に1回程度の液体窒素校正が必要でした。しかしながら液体窒素の取り扱いには注意が必要であり、観測地点が遠方にある場合や船舶で長期観測を行う場合には校正が困難であるという課題がありました。そこで当社では液体窒素を用いることなく簡便な輝度温度の算出を目的として研究を推進しました。

研究内容

  • 今回の研究では液体窒素を用いない輝度温度の推定手法として、教師あり機械学習を採用しました。本学習では、大気モデルから計算した輝度温度を教師データとして、KASMIが受信する22GHz付近の電波と機械学習を行うことで学習モデルを作成し、輝度温度を推定しました。その結果、他社機の輝度温度に対して相関係数が0.98となり、当社の製品が他社機同様に高い精度で輝度温度を推定できることが分かりました。
    また、晴天時(雲水の影響が少ない状況)に条件を絞ることで、相関係数は0.99、RMSE(推定誤差)は1.62(K)となり、高精度な輝度温度の推定に成功しました。


  • マイクロ波放射計「KASMI」


輝度温度の散布図(左:全てのデータ、右:雲水が無い場合)

発表タイトル

機械学習を用いたマイクロ波放射計の輝度温度推定と評価

研究者

・古野電気株式会社 技術研究所 第2研究部 電波応用研究室 坂口 哲朗、髙島 祐弥、箕輪 昌裕
・気象庁 気象研究所 台風・災害気象研究部 第二研究室 主任研究官:荒木 健太郎

研究者コメント

  • 我々のチームでは、マイクロ波放射計に関する研究開発を進めています。今回の研究では、これまでに無かった新たなアルゴリズムを開発し、システムの実装まで行いました。今後も水蒸気観測に焦点を当てた研究を進めます。我々の研究成果を通じて、気象に関する課題を解決する製品の提供を目指すとともに、マイクロ波放射計が皆さまの身近なところで活躍できるように取り組みます。

    古野電気株式会社 技術研究所 第2研究部電波応用研究室:坂口哲朗

※本研究は、JSPS科研費(JP23H00519, JP23H00221, JP22K18733)の助成を受けて実施されたものです。

今後も「安全安心・快適、人と環境に優しい社会・航海の実現」という事業ビジョンのもと、輝度温度の高精度化に取り組み、放射計で得られた情報を災害の予測などに活かせるよう検討して参ります。

関連リンク

水蒸気観測(マイクロ波放射計):https://www.furuno.co.jp/corporate/rd/open/#link02

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